「推しのキャラクターをもっと人間らしく描きたい」「不健康な色気を演出したい」「生活感のあるリアリティを追求したい」……。そんなとき、避けて通れないのが「肌の質感」の表現ですよね。
いつも通りのツルツルでピカピカな美肌も素敵ですが、あえて「肌荒れ」を描き込むことで、キャラクターに深いストーリー性や圧倒的なリアリティを宿らせることができます。
今回は、イラストで肌荒れや肌トラブルを魅力的に、かつ説得力を持って描くための具体的なテクニックを徹底解説します。デジタルペイントのレイヤー構成から、汚く見せないための色の選び方まで、今日から使えるノウハウを詰め込みました。
なぜイラストに「肌荒れ」が必要なのか?
完璧すぎる肌は、時に「作り物」のような印象を与えてしまいます。一方で、現実の人間には、多かれ少なかれ肌の凹凸や赤み、疲れによるクマが存在します。
肌荒れをイラストに落とし込む最大のメリットは、キャラクターの背景(バックストーリー)を視覚的に説明できることです。
- 夜更かしが続いている設定: 目の下のクマや、血色の悪さ。
- 思春期の葛藤: おでこや頬に点在するニキビ。
- 冬の厳しい環境: 粉を吹いたような乾燥や、鼻先の赤み。
- 不規則な生活: 脂ぎったテカリと、毛穴の開き。
これらを意図的に描き分けることで、言葉で説明しなくても「このキャラは今、こういう状況なんだな」と読者に伝えることができるようになります。
肌荒れイラストを「汚く」見せないための基本ルール
肌荒れを描く際、初心者が陥りがちなのが「ただ茶色や黒の点々を打ってしまい、ゴミがついているように見える」という失敗です。イラストとしての魅力を保ちつつ、肌トラブルを表現するには3つの鉄則があります。
1. 「点」ではなく「面」の赤みを意識する
ニキビ一つを描くときも、いきなり中央に色を置くのではなく、その周囲がじわっと炎症を起こしている「赤み」から描き始めます。境界線を曖昧にぼかすことで、皮膚の下で何かが起きている生々しさが生まれます。
2. 彩度を落としすぎない
「汚いもの=濁った色」と考えがちですが、肌トラブルは「炎症」です。つまり、血が通っている証拠でもあります。あまりにグレーに近い色を使うと、死人のような印象になってしまいます。少し彩度を高めた赤や紫を「乗算」レイヤーなどで薄く重ねるのがコツです。
3. 主線をいじりすぎない
初心者は輪郭線(主線)をガタガタに描いて肌荒れを表現しようとしますが、これは逆効果です。形そのものを崩すと、デッサンが狂っているように見えてしまいます。主線は綺麗に保ったまま、塗り(色)の段階で質感を足していくのが、清潔感を損なわない秘訣です。
部位別・症状別の具体的な描き方テクニック
それでは、具体的な肌トラブルの描き分けを見ていきましょう。
ニキビ・吹き出物のリアリティ
ニキビを描くときは、液晶ペンタブレットなどの繊細な筆圧感知ができるツールがあると、細部の調整がスムーズです。
- 描き方: まず、肌の色より少し暗い赤色をエアブラシでふんわり乗せます。その中心に、彩度の高い赤で小さな円を描き、さらにその中心(一番盛り上がっている部分)に、ごく小さな明るいハイライトを置きます。
- ポイント: 全てのニキビを同じ大きさにしないこと。大小バラバラに配置し、いくつかは赤みだけの状態にすると、より自然な「荒れ具合」になります。
乾燥・粉吹きのテクスチャ
冬場のカサカサ肌や、潤いを失った質感は、ブラシの質感が重要になります。
- 描き方: 滑らかなブラシではなく、ザラつきのある「鉛筆ブラシ」や「カスタムテクスチャブラシ」を使用します。肌の色よりも一段明るい、白に近いベージュを選び、細かく短い線をハッチング(斜線)のように入れます。
- ポイント: 唇の端や、口角、小鼻の周りなど、よく動く場所にこのテクスチャを集中させると、「皮膚が剥がれかかっている感」が強調されます。
クマと血管の透け感
目の下のクマは、単に黒く塗るだけでは不十分です。
- 描き方: 下まぶたのキワには赤みを少し残し、その少し下に「青紫」や「茶色」の影を落とします。さらに、こめかみや目の下に、ごく細い「青」のラインを薄く引くと、血管が透けているような不健康な美しさを演出できます。
- ポイント: クマの境界線をパキッとさせず、下に向かってグラデーションで消していくと、疲労感がリアルに伝わります。
デジタルイラストでのレイヤー構成と工程
効率的に肌荒れを描き込むための、おすすめのレイヤー構成を紹介します。この方法なら、後から「やっぱり肌を綺麗にしたい」と思った時の修正も簡単です。
- 通常レイヤー(ベース): まずはいつも通り、ムラのない綺麗な肌を塗ります。
- 乗算レイヤー(赤み・色ムラ): エアブラシで、頬や鼻周り、目の周りに薄く赤や紫を乗せていきます。ここで「健康すぎるツヤ」を消します。
- オーバーレイレイヤー(テカリ・炎症): ニキビの頂点や、脂っぽさを出したい部分に、彩度の高い色を置きます。
- 通常レイヤー(仕上げ): Apple Pencilなどの細いペン先を使い、粉吹きや角栓、細かい引っ掻き傷などの「線」の情報を書き込みます。
この4層構造を意識するだけで、情報の密度がぐっと上がり、深みのある肌質になります。
道具選びで変わる肌の質感表現
肌荒れの細部を描き込むには、自分の筆圧に合ったデバイス選びも欠かせません。
例えば、繊細なハッチングで乾燥を表現したいならiPad Proのような直感的に描けるタブレットが向いていますし、膨大なレイヤーを重ねて複雑な色ムラを作りたいなら、スペックの高いデスクトップPCとペンタブレットの組み合わせが安定します。
また、アナログ風の質感を出すために、あえてキャンバスのテクスチャを合成するのも一つの手です。ノイズを薄く乗せるだけで、肌の「毛穴感」を擬似的に再現することができます。
シチュエーション別:肌荒れの演出アイデア
キャラクターの個性を引き立てる、肌荒れの活用例をいくつか提案します。
「仕事中毒な大人」を描く場合
目元の深いクマに加え、髭剃り負けしたような顎周りの赤みを足してみましょう。また、コーヒーの飲みすぎで胃が荒れている設定なら、口角に小さな吹き出物を一つ添えるだけで、そのキャラの生活習慣が透けて見えます。
「思春期の少年少女」を描く場合
おでこの生え際や、髪の毛が刺さりやすい場所にニキビを描き込みます。あえて絆創膏を貼らせるのも良いですが、その絆創膏の下が少し赤くなっている様子を描くと、より「隠したい悩み」としての実感が湧きます。
「極限状態の戦士」を描く場合
泥汚れや血色不足に加え、唇のひび割れを強調します。水分が足りていないカサついた質感は、ハイライトを一切入れないことで表現できます。
肌荒れイラストの描き方とコツ!リアルな肌トラブルを表現する手法を解説:おわりに
イラストにおける肌荒れは、単なる「肌の欠点」ではありません。それはキャラクターが生きてきた証であり、今まさに感じているストレスや環境を雄弁に物語る「演出」の一部です。
「綺麗に描かなきゃ」という固定観念を一度捨てて、あえて肌にトラブルを書き込んでみてください。最初は勇気がいりますが、一度コツを掴めば、あなたの描くキャラクターはもっと身近で、もっと愛おしい存在になるはずです。
今回ご紹介した赤みの入れ方やテクスチャの活用法を参考に、ぜひあなただけの「理想の肌荒れ表現」を追求してみてくださいね。

コメント